知識ゼロの文系が如何にして技術畑に適応してきたかっていうはなし。


文系技術者への道
年始から製品チームに配属になり「出てくる言葉がわからない」と苦労している弟に、文系である自分が知識ほぼゼロの状態からどうやって最先端で開発している技術者と議論を交わすまでに至ったのかを書き示して兄の威厳を保とうという試みが当エントリの趣旨。弟よ、敬う準備は出来ているか?
 
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初期スペック
まずは、スタートがどれくらいしょぼかったかを伝えてとっつき易さをアピール。

・ 高校1年: 友人と5教科テストの点数勝負をし、300点差をつけられて坊主になる。
・ 高校2年: 200点満点のテストで3点を取り、学年最下位に。
・ 高校3年: センター試験1週間前に受験に関係ない物理の追試験勉強に勤しむ。
・ 大学以降: ちっとも出来なかった理数系に見切りを付け、文系道まっしぐら。

……という "ちょっとできない" のレベルを凌駕する "異常に出来ない" レベル。

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"異常に出来ない奴" が "技術に強い奴" になれた要因
そんな出来ない奴が技術者と議論を交わし、メカ・電気・制御の設計指針に多少なりとも口出し出来るまでになったのには色々と要因はあるだろうが、体系的に捉えると下記の3つになると思う。

1. 製品技術への興味・関心が強かった。
2. 定性的な説明が出来るレベルにまで自分の中で落とし込んだ。
3. 原理・原則を勉強した。

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1. 製品技術への興味・関心が強かった。
これがすべてのベース。これがあったから「これは自分に関係ないこと。理解できなくてもいいこと。」という見切りを付けずに「あれってどういうこと?教えて教えて。」と聞きまわれた。この “興味・関心” というものは何においても最重要項目だと思う。教えを請う際、相手に「そんなことも知らないの?」って言われる怖さよりも「なんでこうなるの?」という興味の方が強くて、技術会議でも「よく分からなくなっちゃったんですけど、それ出来るとどんないいことがあるんですか?」とか「え?それってつまり○○ってことですか?(説明受けて)おーすげー。これって常識?」みたいなやり取りを結構してきた。というか今もしてる。基本はしょうもない質問なんだろうけど、たまに芯を喰う時があるらしく皆結構ちゃんと答えてくれる。専門技術のことに興味を持って質問してくることが技術者のプライドをくすぐる側面もあるのかもしれない。「知りたい」という思いを起点に、ゼロスタートであることを自覚しながらバカっぽい質問も平気でしてきたのが功を奏しているように感じる。 

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2. 定性的な説明が出来るレベルにまで自分の中で落とし込んだ。
質問する時にどこまで理解したらOKとするか、その線引きの案配も大事。自分は数字や程度は分からなくても、定性的に「これをしたら、こういう原因で、結果がこうなる」という説明ストーリー(因果関係)が描けるように心がけた。誰かに聞かれた時に「○○さんがそう言っていたから」なんてかっこわるすぎるし、そんな伝書鳩みたいな存在に価値は無いように思えたから。だから自分が聞かれたときに要約だけでも回答できるようにした。

その回答が出来るようにするため、技術解説をしてもらった際の最後には毎回「それってつまりこういうことで合ってる?」という要約ストーリーを自分で話しての確認作業をするようにしていた。そんなことを繰り返してると段々と自分の中に実例集を持てるようになってきて、別の機会で進○ゼミのごとく「あ、これこの前の類題?」と気付けるようになり、指摘できるようになっていったように思う。

また、定性的なストーリー説明が出来ると、副次的なメリットとして、説明がシンプルになり理解されやすくなるという面もあった。その結果、ちょっとした説明の時に重宝される。最後は定量的な判断が必要になるのだけど、それがきな臭い話なのか or そうでないのかの勘所を持つ人が最初に臭いをかぐトリガー材としてはフィットするらしい。

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3. 原理・原則を勉強した。
先に書いた "定性的な理解" の為に原理・原則をおさえることも重視してきた。このおかげで製品技術への応用も考えつくようになったし、その技術を採用することのリスク嗅覚もかなり養われた。数式も扱うようになった。計算はしないのだが、ある特定の事象を引き起こすパラメータの関係性を確認するために数式というのはとても便利。数式となると途端に苦手意識出るかもしれないけど、数学3点の俺にも出来たから多分皆出来る。

具体的にどの程度のことをするのか例をあげて説明してみる。以下、とある会議にて。

技術者A: 
「ここではPhase Shift Focus方式を採用します。Phase Shift Focusはご存知の通り、ZをXY情報から持って来れるのが利点です。」

自分:
「ご存知?知らねーし。ZをXYから持ってくるってどういう意味だ?ググってみるか……『Phase Shift Focus, Principle』っと。文字読んでも分からないから画像検索にしよっと。」

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Quote from photography life

「お、なんかそれっぽいの出てきた。あーそういうことか!光の強度分布を拾ってるのね!ふむふむ。」……というような感じの結構しょぼい調べ方。だけど、本当にこうしたちょっとしたことを侮ってはいけない。実はこの後、全然別の機会に同様にしてエンコーダを調べた。その時のノート(リアルなメモ)が以下。

【NOTE】 Encoderの原理(Incremental Encoder & Abusolute Encoder)

■ インクリメンタルタイプ=相対位置検出型

  • モータの累積回転の情報をスタート時点(原点)からの積算量で検出するため、システムの電源OFF時には情報がリセットされてしまい、再スタートの際に各軸をスタートの位置に戻すなどの原点復帰作業が必要。
  • 開始時のほか、非常停止や停電から復旧する際に原点復帰(ゼロの位置に戻る)が必要。

  f:id:mken123:20160405020541j:plain

  Quote from Foros de Electronica

 

■ アブソリュートタイプ=絶対位置検出型

  • 電源を入れると同時に絶対位置を検出できる=原点復帰作業が困難な工程では必要不可欠。

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  Quote from Nikon


そしてそのノートの最後にはこう書いた。

【IDEA】 AbusoluteならXY EncoderもPSFの方法でZまで計測できないか? 


結果的には「もうそれやってるとこあるよ。」って回答が来て新発見でもなんでもなかったのだが、こんな風にそれがどうやって成り立っているのかを調べていくと、ひとつの知識から別の知識につなげていくことが出来る時があり、なかなか面白い。

是非とも新たな技術用語を覚える際には、原理・原則を調べて、その形状・機構である意味と、その方式の部品を採用している理由に考えを巡らせるようにしてみるといい。そこにイノベーションの種は眠っているはず。こうしたことの積み重ねが知識や知恵を製品に落とし込む発想を作っていくと思っているし、そうした発想は文系にだって出来ることだと思う。

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おわりに。
こうして書いてみると色々考えながらやってきたみたいだけど、後から振り返って体系化して書いているからに過ぎない。結局都度自分なりに工夫しながら目の前の物を一生懸命やっていくのみなんだよなーとしみじみ思う。その一生懸命の原動力になる興味・関心・情熱が湧くような職場にいられる自分は幸せなんだろうな。
 
っていうはなし。